こんにちは、加藤です。

「これから治療を考えているFTMの為の歩き方マップ」をご紹介していきます。

僕が知っている知識や実際に経験してきて感じたことなど全てをここに書いていこうと思います。

少しでも参考になれば嬉しいです。

今回は、治療のメインとも言える「ホルモン治療」についてご紹介します。

性同一性障害のホルモン治療とは

性同一性障害のホルモン治療には、①二次性徴抑制療法②性ホルモン療法の2種類があります。

二次性徴抑制療法は12歳から、性ホルモン療法は15歳から(条件付き)開始することができます

どちらも性自認とは異なる体の変化・特徴を緩和する為に行われるものです。

ホルモン投与の副作用はもちろんありますが、全体的に副作用よりもホルモン作用によって得られる効果の方が大きく

当事者のQOLを向上させる上で欠かせない治療となっています。

二次性徴抑制療法について

二次性徴抑制療法とは?

二次性徴抑制療法は、二次性徴が始まる前または始まってから一定期間内に開始できるホルモン療法で、

思春期に起こる体の変化を遅らせることができます

二次性徴により著しい違和感を有する当事者は、性自認と合っていないかもしれない体の変化を遅らせることで、

精神的な苦痛を緩和し、性自認と向き合う時間を長く取ることができるのです。

性ホルモン療法との大きな違いは、可逆性があること

つまり、二次性徴抑制ホルモン(薬品名:Gn-RHアゴニスト)の投与をやめれば、

思春期を迎えて成長していくことができます。

*詳しい作用機序はこちら

メリットとデメリット

メリットは、女性化を抑えることができることです。

乳房の発達・股関節の広がり・毎月の生理は停止または抑制されます。

月経が停止できるため、身長も伸びやすくなります。(羨ましい・・・・w)

抑制療法後に性ホルモン療法に移行する場合は、女性化が限りなく抑えられた状態で男性ホルモンの投与を開始できる為

男性としてのその後のQOLは向上します。

また、性自認とは異なる体の変化による精神的な不安も軽減するため、学校生活や日常生活の改善も望めます。

デメリットは、専門施設が少ないこと、費用が高額であること、です。

二次性徴抑制療法を受けられる病院は、数カ所しかありません。(岡山大学病院、大阪医科大学病院、おきなわジェンダークリニックなど)

費用は、1回4万円程度と高額です。

月1回の皮下注射を約2年間続けることになるので、注射費用だけで100万近くかかります。

近くに専門施設がないことがほとんどなので、これに合わせて交通費や宿泊費がかかることもあるでしょう。

性ホルモン療法について

投与量と投与回数

性ホルモン療法、クロスホルモン療法とも言われます。

FTMの場合は、アンドロゲン製剤を筋肉注射で投与していくケースが日本ではほとんどです。

肩かお尻を選択できるので、お好きな方をどうぞw

男性と同様の血清テストステロン値である150~200ng/dl以上を考慮して、アンドロゲン・デポ製剤を125~250mg/2~4週で投与していきます。

心身のバランスをみながら、投与量と頻度を医師と調整していく事になります。

ちなみに、投与量と半年以内の変化に大きな差はないとのデータも出ていますので、

過剰摂取は意味ないです。

また、二次性徴抑制療法とは異なり「不可逆的」な変化が多いので、後戻りできない部分もあります。

費用と保険適用について

基本的には自由診療ですので、通院する病院の言い値ですが、平均で3000円程度です。

泌尿器科にかかることが多いと思いますが、病院が見つからない場合は

婦人科のある内科も候補に入れると一気に幅が広がりますので、参考にしてみてください。

よく使用されるデポ剤の一種であるエナルモンデポーは、保険適用にしてくれる病院もあります。

その場合は3割負担なので1000円以下で打つことができます。

僕も一時期保険適用で打ってもらえる病院に出会い、一回1000円で打ってました!

ちなみに、戸籍変更後は男性の疾患に対する治療ということで、保険適用になります

時系列で見る効果と副作用

ホル注の効果と副作用は個人差があるので、参考程度になりますが

投与開始〜SRS後までの効果の現れと副作用について時系列で示してみました。

効果としては、声の低音化、月経の停止、性欲亢進、ひげ・体毛増加、筋肉量の増加、脂肪分布の変化、クリトリス肥大が主に挙げられています。

一般的に声の低音化、月経の停止、性欲亢進は初期に起こります。

もちろん1本目からという訳ではないですが、3回目くらいから小さな変化を感じられると思います。

喉の違和感を感じたり、早ければこの辺から生理が止まる人もいます。

半年くらい経てば、周囲からも声の変化に気づかれ始めます。(僕の場合は、「酒焼け?」と久しぶりに会う人全員に言われてましたw)

ひげ・体毛増加、筋肉量の増加、脂肪分布の変化、クリトリス肥大の効果は徐々に現れるので

半年〜年単位で自分でも気がつく感じです。(お尻の形が変わって来た時には感動したのを覚えています。)

副作用としては、

にきび、過剰投与リスク、体重増加、肝機能障害、動脈硬化、易疲労感、頭髪の減少、うつ病などの精神症状、血栓症、骨粗鬆症

更年期障害・男性更年期(性別適合手術をした場合)などが主に挙げられています。

感じる人が多いのは、にきび、体重増加、易疲労感あたりだと思います。

肝機能障害、動脈硬化、血栓症、骨粗鬆症、更年期障害は年齢とともにリスクは上がっていくので、

適切な投与と定期的な血液検査は必須です。

血管系の疾患リスクはどうしても上がってしますので、特に注意が必要です。

ただ、今のところホルモン治療による直接的な死亡率の増加は認められていません

SRS後のホルモン治療

SRS後約1ヶ月後からホルモン注射を再開し、半永久的に投与は続きます。

子宮・卵巣がほとんど機能していない状態でオペをしているので、大きなホルモンバランスの崩れはありませんが、

ホットフラッシュなど若干の更年期症状を感じる事もあります

一般的に、摘出前と摘出後では投薬頻度は低くなっていきますが、体の様子をみつつ適切な条件を探していきます。

そして摘出前と大きく変わるのは、「骨密度」への感度を高めることです。

女性ホルモン(エストロゲン)は、骨の形成と骨の吸収を促進する働きがありますが、 SRSによってエストロゲン欠如状態になっています。

SRS後の骨粗鬆症の症例は今のところ報告されていませんが、これは若い当事者が多いからだとも言われています。

ただ、骨吸収マーカーが高くなっている場合だと骨密度が低くなる傾向にあるので、

定期的な男性ホルモンの投与と適度な運動は重要です。

まとめ

今回はFTMのホルモン療法についてまとめました。

FTMで治療を望む場合は、ほぼ100%の人がホルモン治療を行うと思います。

男性ホルモン投与の効果だけでも十分男として社会で生きていけます。

それだけ効果の大きな治療ですが、一方でまだわかっていない副作用の影響があることも事実です。

定期的に最新の研究結果が発表されていますので、そちらもアップしていきたいと思います。

個別に相談ある方は、お気軽にご連絡ください。